富士山グラス開発ストーリー(デザイナー鈴木啓太さん)

縁起門|インタビュー:鈴木啓太さん

●使い手のアイデアで、面白さが広がっていく。

『日本の新しいおみやげ』というテーマのもと東京ミッドタウンが主催したデザインコンペにおいて
審査員特別賞を受賞した富士山グラスや素材の銅とシルバーメッキで紅白を表現したRED & WHITEなど、
縁起門で支持されるアイテムの発案者であるプロダクトデザイナーの鈴木啓太さん。

世の中に新たな定番アイテムを提示するプロジェクト「THE」では、
くまモンを手がけるクリエイティブディレクターの水野学さん、中川政七商店の中川淳さんとともにプロデューサーを務め、
先ごろオープンした丸ノ内KITTEに「THE」を中心に取り扱う「THE SHOP」を展開するなど、幅広く活躍なさっています。

 

ーー鈴木さんの職業柄、常日頃から合理的だったり、数学的な考え方をしているのかと思いきや、意外にも縁起にこわだる一面があるそうで。

毎日の生活の中で、験を担いだり、縁起の良さを気にすることは少なからずあります。
例えば、コインロッカーの番号だったらラッキーセブンの“7”や末広がりの“8”から先に選んだり、
いま付けているネックレスも仕事で行ったブータンで僧侶の方が編んだものだったりします。
どうしてもというより、あくまで気軽な気持ちで取り入れています。

 

縁起門|インタビュー:鈴木啓太さん

 

ーー富士山グラスは、ビールを注いだ姿が富士山に見えるというユニークな商品です。富士山は代表的なおめでたいモチーフですが、着想を得た時のことを教えて下さい。

富士山グラスは、2008年に東京ミッドタウンが主催するデザインコンペで審査員特別賞を受賞しました。
その時のテーマは『日本の新しいおみやげ』でした。
本来、おみやげというものは、その地域に根付いていたり、親しまれているものを、持ち帰ることだと考えました。
そうするとまず、日本人が好きなもの、誇りに思っているものに限定されます。
同時に、海外の人が知っていて通じるモチーフとなると富士山以外は考えられなかった。
また、世界各国に流通するポピュラーなものとしてビールが思い浮かびました。
日本独自のモチーフである富士山、そして世界中で広く愛されているビール、このふたつのラインから“富士山型のビールグラス”という答えを理詰めで導き出した感じです。

 

ーー富士山が現れるには、ユーザーがビールを注ぐひと手間が必要になりますが。

自分の体験として、旅行先のおみやげにオブジェなどを選んだ場合、買った瞬間に満足してしまうことがありました。
ろくに箱から出さなかったり、2週間くらいで飽きて棚の隅に追いやったり。そんなこともあって実用性に強くこだわりました。
置いて眺めるようなおみやげにはしたくなかった。使ったときに、行った場所や買った場所を思い出してもらえたらいいかなと。

 

ーービールの代わりにレッドアイを入れると赤富士になるというアイデアも面白いですね。

富士山グラスを考えた時、TwitterをはじめとするSNSがすでに台頭していました。
面白いものを見つけた時に、みんな写真を撮ってネットにアップするじゃないですか。
そういう風に機能して広がってくれればいいと思ったし、実際に黒ビールを入れて黒富士だって提案してくれたユーザーの方もいました。
黒富士という言葉が本当にあるのかは、知らないですけど(笑)。使ってはじめて面白味を発揮する点は、先程の考え方と共通するところです。

 

縁起門|インタビュー:鈴木啓太さん

 

ーーRED & WHITEの銅器は、表の銅を紅、内側のシルバーメッキを白として紅白に見立てた商品ですね。

日本の国旗の日の丸や紅白幕からも分かるとおり、紅と白は、おめでたい色の組み合わせになります。
僕は芸術家ではなく、やっぱりデザイナーなので、クライアントさんに喜んでもらうために市場で売れるアイテムを考えることが重要になります。
デザインそのものやパッケージ、値段も考えますが、もうひとつ商品に深みや説得力を持たせるよう背景にあるストーリーも考えます。
そんな時、お祝いや縁起にまつわるものがキーワードとして、よく浮かびます。
お祝いや縁起の良さは普遍的なものなので、商品と結びつける時に使いやすいんだと思います。
また、このRED & WHITEは、使ってはじめて感じる驚きを持ったアイテムでもあります。銅は保冷性に優れた素材です。
そのため氷を入れるとたちまち温度が下がり、手に持つとあまりの冷たさに声を出してしまうほどです。
この冷たさは体感しないとわからないです。

 

縁起門|インタビュー:鈴木啓太さん

 

ーー生産は富山県高岡市を拠点に織田幸銅器が行っているんですよね?

銅の加工において長い歴史と高い技術を持っている地域であることは確かなんです。
ところが、いつの間にか銅以外の金属素材で生産された仏像やオブジェの生産が主になっていって、気がつくと産地に「銅」のブランドが無くなっていました。
そのような状況に危機意識を持った織田幸銅器さんからお声がけいただき、銅の素晴らしさをもっと身近に伝えるべく銅器ブランドをスタートさせました。
富士山グラスの製造元である菅原工芸硝子株式会社は、学生の時からのお付き合いです。
一緒にものづくりを協同している企業は、どこも大企業という訳ではありません。
デザインした商品がきちんと結果を出し、次の挑戦に繋がっていけるようなサイクルを築いていきたいです。
効率や儲けより、物作りにこだわり職人を大切にしています。なので売上という成果をきっちりだして、伝統の技術を今に伝える良いサイクルを築いていきたいですね。

 

縁起門|インタビュー:鈴木啓太さん


プロフィール

鈴木啓太

プロダクトデザイナー。PRODUCT DESIGN CENTER代表。1982年愛知県生まれ。2006年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業。株式会社NECデザインに勤めた後、2009年よりイワサキデザインスタジオに所属。2012年に独立し、デザインオフィス PRODUCT DESIGN CENTER、プロダクトブランド THEを設立。


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