ゼロ転び、起きっぱなしの達磨

父は作務衣で床に座って仕事する。

父は作務衣で床に座って仕事する。

「こんぴらさん」の名で親しまれる金毘羅宮。
香川県仲多度郡琴平町にある、象のあたまの形をしたその名も象頭山の中腹に鎮座する神社は、古くから縁起のよいスポットとして信仰されてきた。
本宮まで785段(奥社までは1368段!)もの石階段がつづく参道を少し上がったところ、まさに“縁起の入口”に山中象堂はあった。

 

【父親のヘタリ達磨 ~“七転び八起き”ならぬ“ゼロ転び”!】

 

ーー倉本「かっこええな~! 達磨って、ふつうはもっと丸っこいですよね。このかたちは見たことないんですが…」

山中さん「達磨さんといったら、正面で正座しているのがスタンダードなんですけどね。
払子(ほっす:仏教の法要の際に僧が威儀を示すために用いる法具)を持ってカラダをひねっているポーズの達磨を、先代である父が彫っていたんです。
それをもっともっと単純化していって、このカタチが生まれました」

 

縁起門:山中象堂× 倉本美津留

 

ーー倉本「山中象堂さんのオリジナルなんですね」

山中さん「うちのロングラン商品です。父のときは、高さがもっとあって、出ている顔の面積もいまより広くて、目玉がギョロっとしてました。
私は、独自に上からつぶしていって、極端化していったんです」

 

ーー倉本「どんどん“ヘタリ”度合を大きくさせていったと。
  達磨の縁起のよさを、よく“七転び八起き”なんて言ったりしますけど、このヘタリ達磨なら最初から転びませんよね~。
  言うなれば“ゼロ転び起きっぱなし”! それってめちゃめちゃ縁起がいいじゃないですか!」

山中さん「そうでしょう。こんぴらさんは海の神様なんですけど、お参りに来た船会社のひとに
『ヘタリ達磨は転ばんがらいい。船は一回でも転んだら終わりだから』って言われたことがあります。ほんとにそやなって」

 

縁起門:山中象堂× 倉本美津留

【持っているうちに“透けてくる”達磨の風合い】

 

ーー倉本「木はどこのを使ってるんですか?」

山中さん「木は四国内のものです。主にこの近辺の香川、愛媛から。」

 

ーー倉本「地元のものを使ってるんですね。やっぱりいい木じゃないといい感じにならないでしょう?」

山中さん「そうですね。クスノキの、いわゆる“一番玉”を使ってます。土から出ている幹の一番下のところ。
枝分かれする前の、すっと伸びている部分です。それを自然乾燥させると、彫りやすいし、とてもいい感じになります。」

 

ーー倉本「クスノキって、何十年…へたしたら100年くらい成長する生き物じゃないですか。
  それの一番いいところをあずかってきて、こういったカタチに生まれ変わらせるわけですよね。
  地球の栄養をもらったクスノキが、ヘタリ達磨になってる…。
  このサイズの達磨を完成させるのに、どれくらいの時間がかかるんですか?」

山中さん「逆算すると…漆を塗るのに10日。仕上げは4-5日。その前の荒彫りは4-5日。
この〇〇号サイズだと、1カ月に1個が限界です。急いでもいかんですからね。
彫っていく過程を大切に、すべて手でしていますから」

 

楠の一番玉を使用した、ヘタリ達磨の荒削りの最中の作品

楠の一番玉を使用した、ヘタリ達磨の荒削りの最中の作品

 

ーー倉本「完成したてはすごい迫力ですね」

山中さん「そうでしょう。だけど、このあとも変化していくんですよ。少しすると漆の赤が明るくなっていきます。顔も今は黒っぽいけど、こちらも徐々に木目の風合いが出てくる。透ける…っていうんですかね。お客さまに持っていただいて、さらによくなっていく感じですね」

 

ーー倉本「家に置いておくと、その空間を含めて、いい感じに変わっていくということですか。地球の栄養が空間までつながっている感じがするなぁ」

 

縁起門:山中象堂× 倉本美津留

 次回(POPだるま誕生!)に続く…

 

倉本美津留
1959年広島生まれ。放送作家、ミュージシャン。
「ダウンタウンDX」Eテレのこども番組「シャキーン!」などを手がける。
これまでの仕事に「ダウンタウンのごっつええ感じ」「M-1グランプリ」
「伊東家の食卓」「たけしの万物創世記」「HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP」他。
「一人ごっつ」では大仏として声の出演も。
近著にことば絵本「明日のカルタ」(日本図書センター)、「ビートル頭」(主婦の友社)。


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