POPだるま誕生!

縁起門:山中象堂× 倉本美津留

このコラムは、前回(ゼロ転び、起きっぱなしの達磨)に引き続き、山中象堂さんの取材コラムをお届けします。

 

ーー倉本「達磨は初代から作ってたんですか?」

山中さん「はい。初代は、それこそ名人と言われとったんです。私が一番好きなのは『蜂達磨』というやつ。達磨さんの額に蜂がとまってるんです。蜂がとまってても達磨さんは動くことができんから、それをこう、ぐーっと睨んでるんです。また、その蜂がものすごく精巧に彫られてるんですよ」

 

継がなかった長男が小学生のときに一生懸命作った年表。年表づくりで燃え尽きたか…

継がなかった長男が小学生のときに一生懸命作った年表。年表づくりで燃え尽きたか…

 

ーー倉本「それはまたおもしろいですねー。初代のオリジナルの発想でしょうか」

山中さん「そうだと思います。昔の人の仕事はすごいですよ。細かい作業、見せ場を作っておいて、なおかつ大胆なつくりにしている」

 

ーー倉本「だけど、初代のそういう流儀が、きちんと今に受け継がれてるんですよね」

山中さん「職人って、特に昔はですが…人格が厳しいでしょう。なかなかすんなり親から子に受け継がれていかないんですよ。
厳しい父に反発した長男は家を飛び出す(笑)。よくあるパターンです。
うちも長男である兄が飛び出して、10歳ほど上の私の従兄弟が、まずは弟子になりました。私はその弟弟子になります」

 

ーー倉本「で、次の代は娘さんがバトンを受け取ったんですね」

 

削られた木片は絵にも描けない香しさ。これでお風呂を焚いてるそう。贅沢!

削られた木片は絵にも描けない香しさ。これでお風呂を焚いてるそう。贅沢!

 

山中さん「私はラッキーです。いまどきの娘ってなかなか親の言うこと聞かんしね(笑)。友人には『あんたしあわせだね』って言われます」

 

ーー倉本「娘さんは一人っ子なんですか?」

山中さん「それこそ、娘にも兄がおるんですけど、長男は全然興味をもたなくて(笑)」

 

ーー倉本「“長男やらへんからパターン”までも、しっかり受け継いでるじゃないですか(笑)」

 

【娘のポップ達磨 ~“オリジナルアレンジ”という伝統】

 

ーー倉本「ポップ達磨はどうやって生まれたんですか?」

山中さん「娘が『家業を手伝う』ってなって、練習彫りを指導してるとき、彫るポイントに鉛筆でしるしをつけていたんです。
そしたら娘が『このしるし、水玉に見える。これ、そのまま水玉模様にしたらかわいいんじゃないかな…』って。
思わず『お前は草間弥生かっ!』と(笑)。
そしたら『別に水玉は草間彌生のモンじゃないし』と娘。そらそやな。
じゃ、やってみるか。それで作ったものを、香川県の県産品コンクールに出したのが一番最初のきっかけです」

 

娘は、椅子にかけて机で絵付け。

娘は、椅子にかけて机で絵付け。

 

ーー倉本「へえ! 新しい世代だからこその発想ですよね。それで、コンクールの結果はどうだったんですか?」

山中さん「見事に…落選です(笑)。17,000円の大きい達磨なんて売れない、という審査評でした。
たしかに、店先に2、3個出してたら『あ、これかわいいー!』なんていう若い方の反応はあったんですが、『この値段ならアノ洋服も買えるし…』と、二の足を踏んでいる。
そこで、6,000円くらいの小さくてかわいいポップ達磨を作ってみたんです。
そしたら、もう、どんどん売れていく。で、これはいけるぞ! って」

 

ーー倉本「結局、失敗したと思っていたコンクールが、成功のきっかけだったんですね。やっぱり転んでなかったわけだ。ヘタリ達磨理論や」

山中さん「そういうことかもしれないですね。うまくいく前は、審査員の悪口言ってたんですけどね(笑)」

 

ーー倉本「あはは」

 

ポップ達磨によってお客さんの思いまで知ることができるようになったと山中さん

ポップ達磨によってお客さんの思いまで知ることができるようになったと山中さん

 

山中さん「最初に、渦とボーダーとドットの三種類を売り出しました。
そしたら、たまたま来た散髪屋さんが『渦を散髪屋の看板のトリコロールカラーにしてくれない?』って。
それで『オーダー承ります』と、店先にひとこと書いてみた。
そしたら、ふぐ料理屋さんが『フグのん作って』と。フグ達磨。
縁起がいいからお店に置きたいと。それがどんどん広がっていった感じです」

 

ーー倉本「娘さんはもともと絵が上手だったんですか?」

山中さん「小さいころから絵を学ばせていて、大学も美術学科に進みました」

 

ーー倉本「お父さんが彫った達磨に娘さんが絵をつけている。
娘さんは、絵をキャンパスに描くのではなく達磨に描くことで、アーティストとして自立したということですよね。
お父さんが磨いてきた技と、娘さんがやりたい夢とが合わさって新しいものができた。
そして、世の中にその価値が認められてる。すごく感動的な話ですよね」

山中さん「私らは感動的とは思わんですけど。確かに…縁起はいいかもしれませんね(笑)」

 

縁起門:山中象堂× 倉本美津留

 

倉本美津留
1959年広島生まれ。放送作家、ミュージシャン。
「ダウンタウンDX」Eテレのこども番組「シャキーン!」などを手がける。
これまでの仕事に「ダウンタウンのごっつええ感じ」「M-1グランプリ」
「伊東家の食卓」「たけしの万物創世記」「HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP」他。
「一人ごっつ」では大仏として声の出演も。
近著にことば絵本「明日のカルタ」(日本図書センター)、「ビートル頭」(主婦の友社)。


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